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2015 " Everything returns to the (memory) sea then pours back down
/ すべて海へ還っていく、そしてまた降り注ぐ " より
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目で「見る」ことの手がかりがなくなったら、いったい誰のことを識別することができるだろうと考えることがある。皮膚にさえ触れたことのない人や、表面の表情しか知らない人がいる。ただ見えていることやただ聞こえていることに寄りかかっている世界認識の仕方とは、案外寄る辺ないものかもしれないと、不在を前にして思う。
内臓の立てる音。名づけられていない愛のありよう。言葉を結べなかった感情。身体の中には見つけられることを待っている遠い場所がある。まだ触れたことのない場所をなぞろうとすることは、身体や記憶の輪郭を何重にも更新して、生きていることの静かな力を取り戻す時間でもあった。
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