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2020 " Etudes for being beyond words / 身体の海に潜るためのいくつかの試み " より(WIP)
「言葉を交わさないコミュニケーション」の可能性について、写真行為を通じて思考している。言葉を用いた対話とは、本当に進化したコミュニケーションのありかたなのだろうか。言葉は嘘をつけるけれど、身体は嘘をつけない。嘘をつくことはひとつの進化の形態なのかもしれないけれど、それによって退化してしまった感性のことや、そのことをよすがに維持されてきた社会のありようについて、コロナ渦と呼ばれる時期に考えていた。
この数ヶ月の間に「ソーシャル・ディスタンス」という言葉が人々の意識空間に半ば支配的なかたちで浸透し、私たちの個々の輪郭としての境界が強制的に「隔てられるもの」として強く意識されるようになった。触れることへの抵抗。それは対人だけではなく、あらゆる対物に向けられるまなざしでもある。そのことは、それぞれの関係性がもっていた生理が、言葉や規則によって一方的にフレームされてしまうような、身体の声が宙吊りになる経験をもたらし続けている。
触覚とは個人的なものでありながら、他者との接触が生じる場としての公共性を同時に担っているように、ひとりの人間の身体の中にはその人のコミュニケーションの履歴によって積み重ねられたひとつの文化がある。
今回の撮影では「眼差しによる対話」などのワークショップを行い、目や皮膚を「聴く」器官へと変容させることを起点としている。感覚の「中心」をずらすことによって互いの境界を攪拌し、身体そのものを「聞き取る態度」から生まれる新しい伝達意識を観察している。身体の中には、宇宙よりも遠い場所がある。
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