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2019 " Unseen River / 見えない川 " より
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かつて東京で暮らしていた時、どうしても惹きつけられてしまうのは、
社会から求められるあり方に自らを上手にカスタマイズしていくことのできない友人たちの佇まいだった。
「炭鉱のカナリア」という言葉があるけれど、当時の彼らは間違いなく都市のカナリアとして生きていて、
そのささやかな生の営みや、豊かな沈黙に似た言語をまとう身体の気配は、
写真によって残さなければ時代の大きな声にかき消されてしまうように感じていた。
この世界で語られる”強さや弱さ”という尺度では測ることのできない、”弱さ”に紐づく価値があるのだと思う。
彼らの中を生きようとするか細い水脈がどこに行き着くのか、その過程をただ見届けたかった。
生き延びたものと、そうでなかったもの、あたらしく生まれるものが交差していく日々のなかで、
彼らが自分自身によって規定していた境界さえいつのまにか越えていることに、
長い時間をかけて人間の水路を見つめる意味を感じている。
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