諦めることを誰かと一緒に共有する

 

 

二歳になる姪っ子(のんちゃん)が、長崎から遊びにきている。一年半ほど前にうちにやって来たときにお気に入りだったミッフィーの小さなぬいぐるみを見せて、これ覚えてる?と訊くと、うん、赤ちゃんのときね、と答えてくれた。覚えているのか。

 

いつだったか夢の中で、「人は前世で住んでいた惑星と同じかたちの瞳を持って生まれてくる。だから目を見て親しみを感じる相手は、同じ星からやってきたんだよ」と教えてもらったことがある。それが本当かどうかはわからないけれど、そのイメージはずっと頭の片隅にあって、今でも誰かと対面した時には瞳や瞳孔にじっと見入ってしまうことがある。

 

 

光兎舎へ。哲学の道にはもう蛍がいた。加藤さんと、言葉にしなくても通じ合うような感覚を共有するなど。毎年、同じ時期に同じことをしながら、気持ちのどこかで季節の番人を担っているようなところがあるかもしれない。

 

調べてみると、やはり昨年の同じ日に、エレナたちと蛍を見に哲学の道まで散歩をしていた。あの夜は小雨が降っていたけれど、川沿いの葉桜が屋根になってくれて、傘を閉じたまま雨音と蛙の鳴き声に包まれる、とても心地のよい静けさだった。

「夢の中では光ることと喋ることは同じこと」という穂村弘さんの短歌のフレーズと、先日観た映画「メッセージ」を思い出しながら、人は言葉があるから光を持たないのかもしれないと思った。それでも時々、人の心から放たれるような光に立ち止まってしまう瞬間がある。

 

 

大学の帰りがけに、守衛さんが目を輝かせながら「今夜は宇宙ステーションが見えるんですよ」と教えてくれた。片岡くんとYAKの渡邊さんと食堂ルインズで待ち合わせをしていたので、急いで向かう。時刻が迫ってきたタイミングで中庭の灯りを消して頂いて、ほんの数分みんなで空を仰ぎ、じっと宇宙ステーションに目を凝らした。流れ星よりも遅く、飛行機よりも早かった。隣の席でお食事をされていた光兎舎の方とお友達になる。

 

 

HAPSの地域行事の一環で、恵比寿神社の神幸祭行列に参加する。お神輿とともに、提灯や太鼓、旗持ちを担当しながら、半日ほど町内をくまなく練り歩く。足袋で歩くと思いのほか素足の感覚に近くて、見慣れた町の形状を足の裏の触覚で認識していくのが新鮮だった。マイケルの子どものマルマが「友達カード」をくれた。別れ際にバイバイしようとしたら、懐に飛び込むようにハグをしてくれて、なんていうか、よかった。

 

 

先日知り合ったお坊さんのお寺へ。座禅を指導して頂く。

 

 

大橋愛さんとのトークイベントで、初めて自分以外の写真の場でおしゃべりをする。竹井さんも来てくださった。その後、できやよいさんやぽんたさんたちとティラガで打ち上げ。あらためて、FOILという場がたくさんの縁を繋げてくれたことに感謝の念を深くする。夜はUtataneくんとミケネコ食堂へ。お坊さんと相席になる。

 

 

小沢健二がいいともで『美しさ』を歌っていたのを、当時付き合っていた恋人と二人でリビングで眺めていた。その数分間の空気の特別さを、まだ覚えている。四年前の春のことだ。

彼はこの曲を通じて、「本当はわかってる、二度と戻らない美しい日にいると」という永遠性への諦めを歌う。だけどそれは諦めることを誰かと一緒に共有することができるという、優しい諦めでもある。彼も僕も友人たちも同じ速度で年をとって、かすれていく魂の中でひとつの歌を聴けることは、「そして静かに心は離れていく」としてもなお、幸せの一部なのかもしれない。

 

 

先日、友人の高校時代のアルバムを見せてもらった。自分がそこに存在しているわけじゃないのに、もしかしたらそこにいたかもしれないと思わせてくれる近しさがあって、その感覚がとても面白かった。
彼とは六歳離れているんだけど、「写ルンです」で撮ってるっていうフォーマットが記憶の同質性(あるいは同世代性)を担保する要因のひとつになっているのだと感じた。デジカメやiPhoneだと六年も経つと画質の差に開きが出てしまってそれが年代を分断させるけれど、写ルンですはその機構上ずっと一定の画質だから、イメージに伴ってくる古さがその表面性によって干渉を受けにくいのかもしれない。視覚の触覚。 

 

 

建仁寺の禅居庵で開催している「はじまりの絵本展」で、スタッフの大学生から「セブンルール」のナレーションの声に似ていますよ、と教えてもらう。帰宅して早速Tverで視聴すると、似ているかわからないけどとてもいい番組だった。

 

 

先日の小沢健二ライブの余韻がまだ抜けない。春の空気に虹がかかっている。

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